プレス紹介:小国寡民 of リマインド

小国寡民(しょうこく かみん) 130年前、日本の進路を示した岩倉使節団から

小国寡民日本の政治、特に外交の無策ぶりを象徴するシーンが、このところマスコミをにぎわしている。1つは拉致被害者の横田夫妻の訪問を受け入れ、感動しているブッシュ大統領、そして、自民党次期総裁候補の面々が、外交官の向こうを張って各国要人を歴訪しているニュースである。おまけに、当の首相自身も大事な中国をはじめとする隣国外交そっちのけで、殆ど国名すら馴染みのないアフリカの小国を外遊している。

 横田夫妻のホワイトハウス訪問は、どんな外交手段や予算をもってしてもできない、拉致問題に対する国際世論を涌き立て、自由と正義を希求する強い信念を、アピールしたように思う。小泉政権を継承する後継候補は、評価が分かれる小泉流の政治手法に翻弄され、予想外の候補が、ダークホースとして出現する可能性もある。しかし、大事な事は、果たして小泉流の政治手法や政策について、真に継承すべきものがあるのかどうかということである、手法は奇々怪々、政策は浮薄で、種々、マスコミ受けする見出しにこと欠かないが、5年経ってみると、道路公団、郵政、年金、どの改革をとっても、表と裏をひっくり返した程度の骨抜き状態である。明らかに国民の身になってやっているとはいい難い。

 某外国人特派員の著書の中に、この国の悲哀について、冒頭こんな書き出しがある。この国とは、まぎれもなく日本なのであるが、その悲哀は2つ。1つは「国会議員(政治家)が真の国民の代表ではない」ということ、そしてもう1つは「この国の経済問題は、政治の貧困さに起因している」というのである。総裁候補の1人ある安倍さんの留学経歴詐称疑惑も、その人気さ故に、いつしか、霧消してしまっているが、その言動は一国の舵取りを任せるだけの良質な言動とは程遠い。政治家の質の悪いのは自民党ばかりではない。こうした傾向が全政治家に蔓延している。先の偽メール事件の永田議員などは、東大から大蔵省というエリート、前原代表は、松下政経塾という最近流行のタレント政治家養成学校出身、幹事長はというと、生粋のボンボン、これでは偽メールどころか、国会議員になるが故に、種々もたらされるおいしそうな情報の中から信憑性を見抜き、ガセネタを区分けすることなどは到底不可能である。少なくとも、政治の世界以外のリーダーに問われる、資質、実績、先見性、予知能力、問題解決能力、などについて、何のフィルターをかけられることもなく、大半の政治家が出身家系や、学校・母体組織等だけで輩出されることに問題がある。

 日本の経済問題が、どうして政治問題なのかについては、米国専横のグローバリゼーションが、極まりつつある現在、その事例についてこと欠かない。

その第一は、フセインの独裁政治を辞めさせ、石油の安定供給と、イラクの平和維持という大義で始まった、3年に及ぶイラク戦争の結果、我が国は、名ばかりの同盟国という理由で、イラク派兵と巨額の軍事拠出を余儀なくされた。イラクの内戦による死者は後を断たず、ガソリン価格は5割も暴騰している始末である。

 尖閣諸島の醜い島争いは、もうどこかの世界でも死語になりつつあるのに、外務省は無策である。もともと主権があったかどうか分からないのだから、かつて領土であった北方四島の問題と一緒にしないで、共同利用するか、無償譲渡したらいいと思う。それで淨いが収まるのであれば外交投資としては安い。国際間の問題になると島国なるが故に私たち日本人は疎い。もっともっと相手の身になって考える必要がある。
もともと日本海と思いこんでいる私たちは、中国にとっては東海、ロシアにとっては南海というのを知らない。我が師等は、日本海という呼称を止めて、東地中海と呼んだ方がいいと言われる。その方が公平である。大賛成である。

 国民が政治について疎く、将来の国家目標をもたないと、経済がどうなるのかの好個の例がある。ある評論家に、いわせると米国のいう経常赤字と貿易赤字は、見せかけだというのである。何故ならば、この双子の赤字の会計額は185兆円に及ぶが日本や中国は貿易で稼いだカネを、外国の対米資産投資という形で、ブーメランのように、同額以上のカネを米国につぎ込んでいるからだ。石油の値上がりの分のカネも石油メジャーの大半を保有する米国に目に見えない形で還流していることも同様だ。

 経済の語源は、糸偏がつくことから分かるように、世の中を構成しているものごとを、織物を作り上げている1本1本の糸にたとえて、整えることにある。小さくてもいい、カネに頼らず、貧しくても、極力自給自足を目指した、やさしい、本来の日本人らしいテンダー精神で、他国を思いやりながら、新しい日本のかたちを1枚の美しい織物に仕立てる時である。130年前、1年10カ月にわたり国の進路を決めるために米欧の視察に出かけた岩倉使節団も民権と自由平等を基本に「小国主義」を唱えた。老子もいっている[小国寡民]でいい。政治を国民の手に取り戻す必要がある。最優先課題である。  

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